AI OPERATION/ver 6.19/最終更新 2026.10.06 01:05 | AIが記事「生成AIの活用方法が決まらない中小企業へ」を公開しました/今週の更新 2回目

成長戦略で8割の社長が同じ遠回りをする―伸ばし方は4つ、先に埋めるのは既存客

8割の社長が選ぶ成長戦略は間違っているという指摘と、売上を伸ばす順番は4つしかないことを示したアイキャッチ画像。
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「そろそろ新しいお客様を取りにいかないと」——売上を伸ばしたい社長が、まず口にする言葉です。展示会に出る、広告を出す、隣の県まで営業に行く。話はたいてい、そこから始まります。

ですが、成長戦略の順番として見たとき、そこは出発点ではありません。新しいお客様の数を増やすことと、既存客に売上の柱をもう1本つくることは、同じではないのです。

事業を伸ばす道筋は、商品とお客様の組み合わせで整理すると4つしかありません。そして7〜8割の経営者・経営幹部の方が、そのうちの同じ1つを選び、同じところで遠回りをされます。

この記事では、コンサルティング歴28年・300社超の現場から体系化した導線経営®の視点で、次に何を、誰に売るのかを決める順番についてお伝えします。

1.成長戦略の「次に何を売るか」で、8割の社長が同じ選択をする

1-1.売上を伸ばしたいとき、最初に浮かぶのは「新しいお客様」

「今期は売上を1割伸ばしたい」。そう決めた社長が、次に何を考えるか。私が見てきた限り、9割方は「新規開拓をどう増やすか」へ向かいます。具体策もすぐに出てきます。展示会に出よう、web広告を出そう、営業エリアを隣の県まで広げよう、と。

お気持ちはよくわかります。売上が足りないのはお客様の数が足りないからだ、と考えるのが、いちばん自然だからです。

ただ、従業員20〜30名規模の会社で、新規開拓に本気で動ける人は限られます。多くの場合、社長ご自身と、営業の1人か2人です。

つまり新規開拓を選んだ瞬間に、社内で最も高い時間が、そこへ吸い込まれていくということです。決めているのは打ち手ではなく、資源の行き先なのです。

1-2.新しい相手に新しい労力をかける前に、見るべき場所がある

ここで一度、立ち止まって考えていただきたいことがあります。新しいお客様に売るというのは、実際には何をすることなのか、という点です。

相手はまだ貴社をご存じありません。ですから、まず認知していただき、信用していただき、その上で買っていただく。この3段階を、1件ごとにゼロから積み上げることになります。

一方、すでにお取引のあるお客様は、この3段階をとうに越えておられます。同じ100万円の売上をつくるとして、3段階をゼロから積む相手と、3段階を越えている相手。どちらが早いかは、考えるまでもありません。

それでも新規開拓が先に浮かぶのは、「いまのお客様には、もう出せるものがない」と思い込んでおられるからです。売り切った、と。

本当にそうでしょうか。ここを確かめるために、次章では伸ばし方そのものを4つに分解してみます。

2.伸ばし方は、4つしかない

2-1.商品と顧客の組み合わせで整理する4つの選択肢

「どのような商品・サービスを、どのような市場で売っていくのか。誰に売っていくのか」。事業成長・企業発展を考えたとき、これはとても悩ましい課題です。

ところが、そのパターンは4つしかありません。商品が既存か新規か。お客様が既存か新規か。この2つの軸を掛け合わせるだけだからです。

1)市場浸透戦略。既存の「商品・サービス」を、既存の「市場・顧客」に対して販売していく戦略です。

2)新商品開発戦略。新規の「商品・サービス」を、既存の「市場・顧客」に対して販売していく戦略です。

3)新市場開拓戦略。既存の「商品・サービス」を、新規の「市場・顧客」に対して販売していく戦略です。

4)多角化戦略。新規の「商品・サービス」を、新規の「市場・顧客」に対して販売していく戦略です。

一般に成長マトリクスと呼ばれる整理の仕方ですが、名前は覚えていただかなくて構いません。大事なのは、貴社が次に打とうとしている一手が、この4つのどこに入るかです。さて、貴方なら経営者として、何番の戦略を採択されますか。

2-2.定石は「新市場開拓」ではなく「新商品開発」

この問いを出すと、およそ7〜8割の経営者・経営幹部の方が「3)新市場開拓戦略」とお答えになります。いまの商品を、新しいお客様へ。冒頭の「そろそろ新しいお客様を」と、同じ発想です。

ですが定石として、正解は「2)新商品開発戦略」です。いまのお客様に、新しい商品・サービスをお出しする。こちらが先に来ます。

こう申し上げると、「なぜだ、何を根拠にそんなことを…」とおっしゃる経営者の方もいらっしゃいます。ですが、過去の歴史を見ても、弊社がご支援した事例でも、新商品開発戦略であると断言できます。

理由は単純です。3)は、商品はそのままで、相手だけが未知になります。2)は、相手はわかっていて、商品だけが新しくなる。抱える未知の数が、1つ違うのです。

未知が1つなら、うまくいかなかったときに原因がわかります。未知が2つあると、商品が合わなかったのか、相手が違ったのかが、いつまでも判別できません。

「言われてみれば、確かにその通りだと思います…」。次章の2社をご覧いただいた後、多くの経営者の方がそうおっしゃいます。

社長
社長
成長戦略を、そのような発想で考えたことはなかったです。売上を伸ばすというのは、新しいお客様を増やすことだと思い込んでいました。
中丸
中丸
その通りです。相手が決まっていれば、確かめることは商品だけで済みます。未知を1つに減らせるかどうかが、そのまま成功確率になりますよ。
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3.既存客に新商品を出した2社

3-1.預かる仕組みを足したクリーニング店

ここからは、実際にいまのお客様へ次の一手を出した2社をご紹介します。まずは、某クリーニング・チェーン店の事例です。

この会社が足したのは、新しい染み抜きの技術でも、新しい店舗でもありませんでした。お客様にとってかさばる衣類など(コートや毛布など)を、クリーニング後にそのままお預かりするレンタルクローゼット事業です。

お客様から見れば、頼む相手も、持ち込む店も、これまでと同じです。ただ、これまで自宅に持ち帰っていたものを、置いてこられるようになった。それだけの違いです。

会社側から見ると、今まで月ごとにバラツキがあった売上に、毎月定額で入金される、家賃のような収益の柱ができたことで、経営が非常に楽になりました。

ただ、ここで見ていただきたいのは、売上の中身ではなく順番のほうです。この会社は、新しいお客様を1件も増やさずに柱をもう1本立てました。しかも「預かる」という仕事は、クリーニングという本業の延長線上にあります。

3-2.既存客の3割が即決した石油販売店

もう1社は、某石油販売店の事例です。こちらは、もう少し切迫した状況にありました。順調だった業績が直近2〜3年で悪化し、従業員数約50名という固定費が重くのしかかっていたのです。

「地道に新規開拓を…」と言っている時間的猶予はありません。数字が返ってくるまでに何か月かかるか読めない打ち手に、会社の残り時間を賭けられる状態ではなかったのです。

そこで突破口にしたのが、地元密着で展開してきたことによる、既存客との極めて良好な関係性でした。すぐに使える資産は、そこにしかなかったということです。

ご提案したのは、既存客にニーズがありそうなウォーターサーバーのレンタル・設置です。石油とウォーターサーバー。商品としては別物ですが、「地元のご家庭に、暮らしに要るものを届ける」という点では地続きでした。

結果は、3割以上の既存客が即決。後に5割を超える既存客が導入し、V字回復に成功しています。新しいお客様を探しにいった時間は、ここでも1日もありません。

2社に共通して言えるのは、既存のお客様に新たな商品・サービスを提供しているのであって、既存の商品・サービスを新たなお客様に販売しているのではない、ということです。

4.新しい商品は、自社で開発しなくてよい

4-1.江戸の商人が、火事のときに井戸へ投げ込んだもの

ここまで申し上げると、「新商品と言われても、うちに開発力はない」という声が必ず出ます。ですが、2)新商品開発戦略だからと言って、新たな商材・新たなサービスを自社で開発する必要はありません。先ほどのウォーターサーバーも、あの会社が発明したものではないのです。

このようなビジネスの考え方を、江戸時代の商人はよく知っていました。「火事と喧嘩は江戸の花」と言われたほど火事が頻繁に起こっていたようですが、江戸の商人は火事が起こった時、真っ先に顧客台帳を井戸に投げ込んで逃げたそうです。

帳簿は丈夫な紙でできていたので、家が崩れ落ちた後に井戸から帳簿を取り出して、また商売を続けることができたというのです。

お店がない、商品がない状態でも、お客様との関係が残っていれば商いは続けられます。逆に、立派なお店、素晴らしい商品がいくらあっても、お客様がいなければ商いを続けることはできないのです。

江戸の商人が井戸へ投げ込んだのは、紙の束ではありません。これまで積み上げてきた、お客様との関係そのものだったということです。

先日訪問した、200億を超える某一部上場企業も同じでした。2年以内に400億を達成しようとしている成長戦略は、3)新市場開拓戦略ではなく、2)新商品開発戦略です。

自社の強み・本業を柱としながらも、同じお客様の多様なニーズにいかに応えるか。江戸の商人がやっていたことを、商品ラインナップを増やすという現在のやり方・手法で展開しているだけなのです。

4-2.社長が決めるのは、新規開拓の量ではなく順番

ここまでを、社長の仕事として整理します。導線経営®の視点で申し上げると、これは打ち手の量の話ではなく、順番の話です。

中小企業にとって最も優先すべきことは、資源を集中し本業を極めること、すなわち1)市場浸透戦略です。ここが済んでいない会社は、どの戦略を選んでも薄くなります。

その上で一歩踏み出した事業拡大を図るのであれば、既存客をメインに据えたビジネスを先に展開する。さらにもう一歩進めるのであれば、そこで初めて新規客を開拓する。これが定石の順番です。

順番が決まったら、あとは紙に落とすだけです。紙を1枚ご用意いただき、縦に商品(既存・新規)、横にお客様(既存・新規)をとって、4つの欄をつくってください。

埋める順番も決まっています。まず「既存商品×既存客」の欄から埋めます。いまのお客様に、いまの商品をもっとお使いいただく余地を、思いつく限り書き出してください。

ここで手が動くうちは、次の欄へ進んではいけません。書けることが残っているということは、本業を極める余地がまだあるということだからです。

書けることが尽きたら、次に「新商品×既存客」の欄へ移ります。いまのお客様は、貴社以外のどこから何を買っているか。そのうち、貴社が仕入れてお届けできるものはないか。この2問で埋まります。

新規のお客様が絡む残りの2つの欄は、最後です。順番を守っていれば、そこが空欄のままでも不安になりません。まだ進む段階ではない、というだけのことだからです。

この作業自体は、1時間もあれば終わります。にもかかわらず、多くの会社ではこの紙が一度も書かれないまま、新規開拓の予算と人員だけが先に決まっていきます。

社長
社長
新規を追う前に、いまのお客様に出せていないものが何かを、書き出してみます。まずは左上の欄からですね。
中丸
中丸
それで十分です。左上が埋まらないうちに右へ進むと、どこで外したのかがわからなくなります。順番のほうが、打ち手の数より効きますよ。

5.まとめ:本業を極めた会社だけが、次の一歩を踏み出せる!

最後に、ここまでの要点を振り返りましょう。今回お伝えしたのは、導線経営®の視点で見た、次に何を、誰に売るのかを決める順番の話でした。

  1. 伸ばし方は4つしかない——商品が既存か新規か、お客様が既存か新規か。その組み合わせだけで決まる!
  2. 7〜8割の社長が選ぶ「いまの商品を新しいお客様へ」は定石ではない——先に来るのは「いまのお客様に新しい商品を」!
  3. 2社とも、新しいお客様を1件も増やさずに柱を立てた——預かる仕組みも、ウォーターサーバーも、相手はいまのお客様だった!
  4. 新しい商品は、自社で開発しなくてよい——江戸の商人が井戸へ投げ込んだのは、お客様との関係そのものだった!

大切なのは、打ち手を増やすことではありません。4つのうちどこから埋めるかという順番を、社長が決めることです。順番さえ合っていれば、同じ労力でも返ってくるものが変わります。

今日からできる一歩は、紙を1枚とって4つの欄をつくり、左上の「既存商品×既存客」だけを埋めてみることです。かかる時間は1時間で足ります。

貴社には、いまのお客様に次にお出しする商品がありますか?

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この記事を書いた人
中丸 秀昭
中丸 秀昭

日本WEB戦略研究所株式会社 代表取締役。
AIで自働化する「導線経営®」コンサルタントとして、100名以下の中小企業が売上アップに直結する仕組みづくりを支援。集客・営業・販売までを一気通貫で設計する導線経営® × AI活用による収益改善を得意とする。

コンサルティング歴28年以上、300社超の業績アップ・人材育成に携わり、全国の商工会・商工会議所、大手上場企業などでの講演・研修実績も多数。著書に『売上が2倍に上がる法人営業戦略の教科書』『儲かる会社88の鉄則』などがある。